挨拶の仕方は国や文化によって大きく異なるものです。日本では誰かの体に触れる習慣はあまりありませんが、フランスでは挨拶のときにキスをする習慣があります。サラン・レ・バンでの生活のなかでも、店での挨拶や方言など、観察してみると興味深い事柄がいろいろとあります。
ビズの回数は1回?それとも4回?
フランスでは親しい間柄の人と挨拶する際に、ビズといわれるキスを交わす習慣があります。ややこしいのは、ビズの回数が県や地域によって異なることです。少ないところでは1回だけ、そして2回、3回と増え、一番多いところでは1回の挨拶で4回もビズを交わします。ビズは右左または左右と毎回触れ合うほほを変えるので、4回ビズするときには4回ほほを変えることになります。サラン・レ・バンのあるジュラ県のビズの回数は2回です。ビズの回数が違う地域の人同士が挨拶を交わすときには、回数の多い方の人が空振りすることもあり、「ごめんなさい、うちは2回なのよ」、「ああ、うちは3回だから」などという会話がよくあります。初めてあった人やそれほど親しくない人同士では、言葉で挨拶を交わすだけだったり、握手をしたりすることもあります。日本人のなかには抵抗がある人もいるかもしれませんが、相手がビズをしてきたら、それは親しみを表現するものなので快く受け入れてください。
店では気持ちよく挨拶を交わす
サラン・レ・バンに引っ越したばかりで、まだ誰も知り合いがいないときにはフランス人と挨拶や言葉を交わすチャンスも少ないものです。そんななか、唯一言葉を交わすのが、買い物の際に顔を合わせる店員です。日本では店員の方が一方的に「いらっしゃいませ」と声をかけ、客は返事をしないことも多いですが、フランスでは店員も客も「こんにちは」と挨拶を交わします。そして、レジで会計を済ませた後もお互いに「ありがとう、良い一日を!」、「ありがとう、あなたもね!」などと気持ちよく声を掛け合います。日本でも見習いたい素敵な習慣のひとつですね。しかし、レジの担当者が本当に知り合いの場合には、後ろの客を気にせずビズから始まる長話が続くこともあるので要注意です。ほかにも、片側一車線の道で知り合いの車とすれ違う際に、運転者同士が窓を開けて挨拶や話を始めることもあります。後続車にもお構いなしなのでちょっと困った習慣でもあります。
サラン・レ・バンのフランス語はスイス訛り!?
フランス語はフランス国内だけでなく、ベルギー、スイス、カナダなどさまざまな国で話されており、それぞれの国に独特の訛りがあります。そして、日本と同じようにフランス国内にも数多くの方言があるのを知っているでしょうか。サラン・レ・バンのあるジュラ県はフランシュ・コンテ地域に位置しており、この地域独特の訛りはフラン・コントワと呼ばれています。フラン・コントワの特徴は、ゆっくりとした話し方と引きずるような語尾の発音です。フランスのほかの地域の人にはスイス人のように話すといわれることもあります。日本ですでにフランス語を習得してきた人なら、サラン・レ・バンの人の話し方が日本で習ったフランス語と少し違うことに気がつくかもしれません。しかし、フランス語の発音は音声学的に16もの母音があり、それだけで日本人には難しいものです。初めてフランス語を習う人のなかには、方言以前にフランス語の発音の難しさに悩まされる人も多いでしょう。